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第55話  

彼氏?

山下美咲は一瞬固まった。

やばい、失言しちゃった!

だって、この山下巧、学校ではずっとお金持ちのお嬢様みたいな振る舞いだったんだもん。

いつもブランド物のバッグや服を身につけて、高級車で送り迎えしてもらってたし。

まさかこんな彼氏と付き合ってるなんて、想像もできなかった!気持ち悪い!

まあ、言ってしまったことは仕方ない!

だってお兄ちゃんの悪口言ったんだもん!

「謝るわけないでしょ!ふん」そう言って山下美咲は踵を返そうとした。

しかし、山下巧に腕をつかまれてしまった。

山下巧は山下美咲の腕をつかむと、大声で叫び始めた。

「主催者の人!主催者の人はどこよ!この人、こっそり入ってタダ飯食って、有名人と写真撮りまくって、それを自慢してるのよ!誰も止めないの?」

「そんなことしてないわよ!離して!」

山下美咲は必死に腕を振りほどこうとした。

二人の言い争いは、周りの人の注意を引き始めた。

だんだんと野次馬が集まってきた。

だって、こんな場所で騒ぎを起こす人なんて、めったに見られないものだ。みんな興味津々で見ていた。

そこへ、主催者側のスタッフがやってきた。

「どうしたんですか?」スタッフが尋ねた。

山下巧は山下美咲を指さして言った。「この女よ!こっそり忍び込んでタダ飯食って、有名人と写真撮りまくってるのよ!」

「お嬢さん、招待状を見せてください」スタッフは山下美咲に言った。

今日は主催者側が湖心クラブを貸し切ってチャリティーパーティーを開催しており、湖城である程度の実力を持つ経営者は、基本的に招待状を受け取っているはずだった。

招待状はクラブに入る際に提示する決まりだったが、森岡翔が乗ってきた車があまりにも高級だったため、誰も止められなかったのだ。

「私…私には招待状がないんです!」山下美咲は、こんなにたくさんの人に見られているのに、焦って泣きそうになっていた。

「ほら見なさい!この女、タダ飯目当てで来たって言ったでしょう!主催者側も、一体どんな管理してるのよ。こんな女まで入り込めるなんて」山下巧は勝ち誇ったように言った。

「警備員!警備員!」スタッフが叫んだ。

すぐに、何人かの警備員が駆けつけた。

「このお嬢さんを、外へお連れしてください!」スタッフは警備員に言った。

警備員たちは山下美咲に近づこうとした。

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